Q.I(きゅうあい)~短気で無垢で、天使な君を~
「──……この通りの向こうに、保育園があって」
ベンチに座っても尚「心ここにあらず」といった様子の柚葉に、俺は通りの奥を指差しながら切り出す。
「いつもこれくらいの時間──部活終わってこの辺りプラプラしてるぐらいの時間になると、お子さん迎えに来た先生と奥さんをよく見かけてて。その度によく挨拶してて」
「──………」
「お子さん、茜《あかね》ちゃんっていうんだって。すんげーいい子」
「……──。最低……」
柚葉は俯いたまま俺の話を聞いていたが、やがてくぐもった声を出した。
「……あんた、これを見せつけるために、わざわざあたしをここに連れてきたっていうの……? これが、あんたの言う“お灸を据える”ってことなの? ──やっぱあんた、最低……」
「──………。なんとでも言えよ。俺は、脳みそぶっ叩いてでもお前の目ェ覚まさせたかっただけだし。荒療治だろうが何だろうが」
「…──っ、バッカじゃないの?」
柚葉は下を向いたまま、吐き捨てるように叫んだ。