Q.I(きゅうあい)~短気で無垢で、天使な君を~
第5話 格闘天使ちゃんと音楽少年
それから数日後の放課後、部室にて。
いつものようにギターを抱えてバンドメンバーと戯れながら音合わせをしていると、先輩に声高に呼ばれた。
「ケータにお客さん。めっちゃかわいい子なんだけど」
「え?」
冷やかすように耳打ちされ、ひょこひょこと廊下に向かうと──。
「──…あれっ?」
そこには、いかにも帰り支度という佇まいでバッグを肩に掛けている柚葉がいたのだ。
今まで、軽音部の部室に足を運ぶ事なんてなかったのに──。
早速聴きに来てくれた? ……とかじゃないよな。
「や……やぁ、どしたの、珍しいじゃん……」
動揺と喜びがない交ぜになった俺に、柚葉は様子を伺いながら近づいてくる。
「えっと……今、ちょっと平気?」
と、窓越しに話し掛け、柄にもなく咳払いまでしてかしこまる。
「えっ……あ、うん、全然平気……」
先輩に振り向いて軽く許可をもらい頷くと、気を取り直しながら息をつく。