近くのカフェのイケメン店員を「兄です」って言いたい

「さようなら」
『さようならー』

木目調の廊下に夕日が差している。そこで彼氏とお話ししている女の子は、「青春」を楽しみ、これからも思い出は膨らみ続けるのだろう。

そんな若者たち(私も同い年のはずだが)を横目にそそくさと学校を去り、カフェを目指す。もう、暗くなってしまうだろうか。

カフェの看板が見える。

カフェの入り口前に来た。

しかし、私はその場に呆然と立ち尽くしている。

今日、カフェ休みなの...?

しばらく立ち尽くした後、諦めて帰ろうとした時、人影が見えた。あのすらっとしたシルエット...心当たりがある。

違ったらどうしようと思いつつ、窓から覗いてみると、やっぱりそうだ!

「菜月ちゃん!ごめんね、今日は臨時休業なの。」

「彩さん、こんにちは!彩さんは何してるんですか?」

「私は、お店の掃除をしてるの。本当は今日も営業日だったし、トラブルさえなければね。」

「トラブル?」

「気にしないでー。それより、私菜月ちゃんに話があるの。菜月ちゃんって部活入ってないんだよね?」

「まあ、一応入ってますけど幽霊部員ですね。」

「じゃあさ、ここでバイトしない?」

バイト...私が⁉︎
こんな不届き者が働いたらお店に迷惑だよ。あ、でも瀧川さんと一緒に仕事できるなら...あぁ...。

「か、考えさせてください...1ヶ月くらい。」

「1ヶ月!それじゃ遅いっての。人手不足だから、菜月ちゃんのお友達でもいいから、今月中に最低2人確保したいの。考えといて。」

「分かりました。」

「あ、あと!」

彩さんが意地悪な笑みを浮かべて、私の耳に顔の高さを合わせた。

「たつと同じ時間のシフト、空いてるよ」

「やります!バイト!」

やばい、焦りすぎた...。

「もう、そんな即決するとは恋する少女は盲目ね。ゆっくり親と考えて、学校から許可証貰ってくるんだよ。」

「...わかりました。」

こんなに明日の学校が楽しみな日は、今までなかっただろう。

< 5 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop