近くのカフェのイケメン店員を「兄です」って言いたい
「さようなら」
『さようならー』
木目調の廊下に夕日が差している。そこで彼氏とお話ししている女の子は、「青春」を楽しみ、これからも思い出は膨らみ続けるのだろう。
そんな若者たち(私も同い年のはずだが)を横目にそそくさと学校を去り、カフェを目指す。もう、暗くなってしまうだろうか。
カフェの看板が見える。
カフェの入り口前に来た。
しかし、私はその場に呆然と立ち尽くしている。
今日、カフェ休みなの...?
しばらく立ち尽くした後、諦めて帰ろうとした時、人影が見えた。あのすらっとしたシルエット...心当たりがある。
違ったらどうしようと思いつつ、窓から覗いてみると、やっぱりそうだ!
「菜月ちゃん!ごめんね、今日は臨時休業なの。」
「彩さん、こんにちは!彩さんは何してるんですか?」
「私は、お店の掃除をしてるの。本当は今日も営業日だったし、トラブルさえなければね。」
「トラブル?」
「気にしないでー。それより、私菜月ちゃんに話があるの。菜月ちゃんって部活入ってないんだよね?」
「まあ、一応入ってますけど幽霊部員ですね。」
「じゃあさ、ここでバイトしない?」
バイト...私が⁉︎
こんな不届き者が働いたらお店に迷惑だよ。あ、でも瀧川さんと一緒に仕事できるなら...あぁ...。
「か、考えさせてください...1ヶ月くらい。」
「1ヶ月!それじゃ遅いっての。人手不足だから、菜月ちゃんのお友達でもいいから、今月中に最低2人確保したいの。考えといて。」
「分かりました。」
「あ、あと!」
彩さんが意地悪な笑みを浮かべて、私の耳に顔の高さを合わせた。
「たつと同じ時間のシフト、空いてるよ」
「やります!バイト!」
やばい、焦りすぎた...。
「もう、そんな即決するとは恋する少女は盲目ね。ゆっくり親と考えて、学校から許可証貰ってくるんだよ。」
「...わかりました。」
こんなに明日の学校が楽しみな日は、今までなかっただろう。