近くのカフェのイケメン店員を「兄です」って言いたい
「許可証、ゲットしましたー!!」
「さすが菜月ちゃん!」
奥の厨房にいた彩さんが、真っ白な歯を見せて微笑んだ。
「誰すか、彩さん。」
「誰って、いっつもいっつも来てるじゃない。去年までいた坂口の妹よ。」
「坂口さんって誰だっけ。...え、あの坂口さん?」
「他にどの坂口がいるのよ。」
なんか彩さん、瀧川さんに当たり強くない?
「兄弟揃って小さいな。」
「小さいってバカにしてるんですか!」
「お、兄と違って攻撃的ですね。」
意外と毒舌な上にちょっと混ぜてくる敬語、なんか嫌だな。
「いい意味なのか悪い意味なのか分かりませんが、ちょっと一回お兄ちゃん忘れてください!」
「忘れられないよ、あんな化け物。」
「たつー、妹の前で化け物はひどいよ。」
「すいません、彩さん。」
「謝り先は私じゃないでしょう。」
化け物、か。たしかに兄のあだ名はずっと化け物だった。家では突然変異とも呼ばれた。
兄が大学6年までいたのは、紛れもなく、医学部医学科だったからだ。医学科でもかなり優秀な方だったらしく、私は兄に吸い取られたので全く勉学の才能がない。
「とりあえず、店長呼んでくるから。そこで待ってて、菜月ちゃん。」
「はーい!」
毎日学校の制服で通っていたこのカフェに、あのカフェの制服でバイトできる日が来るなんて...。
私、今すごく幸せ!