小さな春に彩りを
空を仰いでみると、たくさんの星が美しく輝いている。
私は、天界にある湖のほとりに立ち、夜風に当たっていた。
「……あれ?彩羽……?」
後ろから聞き慣れた声がし、私は振り返る。そこには、春陽が立っていた。
「春陽……どうしてここに?」
「僕は、ただ散歩してただけだけど……」
「私は、夜風に当たりに来てただけ」
「そうか……」と言いながら、春陽は私の方へ近寄る。そして、口を開いた。
「……今日、彩羽に先に帰るように言ったじゃん?」
春陽の問いかけに、私は「うん」とうなずく。
「あの後、僕ね……兄ちゃんと話をしていたんだ」
「話してた……?」
「うん。兄ちゃん、ぼんやりとだけど、死神が見えるんだってさ……声も聞こえるらしいよ」
「そうなんだ……」
春陽は、そう言って悲しそうに笑った。そして、私の名前を呼ぶ。
「彩羽」
春陽の顔は、何かを決心したようだった。
「はい」
「……僕、兄ちゃんに言われたの。『……あの子には、お前の過去を話したらどう?』って……もう、話しても良いかなって思ってさ」
春陽は、近くに生えている切り株に座る。私は、春陽と向き合って立った。静かな空に、私と春陽の足音だけが響く。