小さな春に彩りを
一旦口を閉じた春陽は、何かを思い出したかのように話を続けた。

「小、中学生の頃も、兄ちゃんにバレないようにいじめられてたんだ。ずっと悪口を言われ続けたよ。生きているのに、生きている感じがしなくって、何度も死にたいって……思ったんだ」

私は、そっと春陽を抱きしめる。

「……話してくれてありがとう。もう1人で苦しまなくて良いんだよ?悩みとかあったら、私が聞いてあげるから。苦しまないで……春陽は、独りじゃないんだから」

「……独りじゃ……ない?」

「そう。あなたは独りじゃない。私が居るから」

「……ありがとう……っ」

普段、泣かない春陽が泣いている。私は、春陽が泣き止むまでずっと春陽を抱きしめ続けた。



春陽が過去を打ち明けてから、3週間が経つ頃、私と春陽は、女神様の元を訪れていた。今日は、春陽が転生する日。

「……彩羽、元気でね」

「うん……そっちこそ良い人生を」

軽く別れの挨拶を済まし、女神様が開けた白い穴の中へ春陽は飛び込んでいった。春陽が消えたあと、一気に涙が込み上げる。

「彩羽さん。春陽さんから手紙を預かっています」

「春陽から……?」

私は女神様から手紙を受け取り、紙を広げた。

「……『僕が消えた後、彩羽に渡して欲しいんです』って言いながら、この紙を渡されたんです」

「なるほど……そうだったんですか」

私は女神様の言葉に、そう返事し、手紙に目を通した。
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