小さな春に彩りを
「僕は死神です。この世に留まっている霊は、何かしらの未練があるんです。その未練を断ち、転生するためのお手伝いをするのが死神の仕事なんですよ」

春陽は一呼吸置き、話を続けようと口を開くがすぐに口を閉じた。

「どうしたの?」

私は、そんな春陽をじっと見つめる。春陽は「……場所を変えましょう」と私に微笑んで、近くの塀に飛び乗った。その春陽の動きは軽い。

「僕について来てください。心配は要りません」

春陽は、私の方を振り返って微笑む。私は、春陽に近づいた。途中、周りを見渡すと冷静な人が的確に指示をしている。

その中、まだ友達の2人は立ち尽くしていた。私は、その2人の表情を見てチクリと胸が痛む。

「ごめん」

小声で呟き、塀の前で立ち止まった。そして、塀の上に軽々と登り、空を仰ぐ春陽の隣に立つ。

春陽は「じゃあ、行くよ」と言い残し、突如現れた黒い穴の中に飛び込んでいく。

私は、春陽の後を追いかけるように黒い穴に飛び込んだ。
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