小さな春に彩りを
「そこで……死神にならない?」

数秒の間が開き、春陽はそう切り出した。いつの間にか、春陽の敬語が抜けている。

「死神になる……私が?」

「そう。死神になる素質は十分にあるよ?」

春陽の問いかけに、私は少し考えた。どれだけ考えても、私の答えは変わらない。

「私、死神になるよ」

断ったら、私の未練は断ち切られて、すぐに転生してしまうのだと感じたのもある。でも、一番大きかったのは……。

「私、困っている霊の役に立ちたいの!」

「……分かった」

あれ?私の未練ってなんなのだろう……?

そんな疑問が頭をよぎるけど、私にはどうでもいいことだった。

「では、少しの間、目を閉じてもらっても良いですか?」

春陽が説明している間、静かに微笑みながら立っていた女神様は、口を開いた。

「分かりました」

私は、女神様に言われるがままに目を閉じる。すると、暖かな光が私を包み込んだ。

少しの間、このまま立っていると「目を開けても大丈夫ですよ」という声が聞こえて私は目を開けた。

だけど、特に何も変化はない……違う。服装が変わってる。

私は、春陽と同じ黒いローブに身を包んでいた。

「今日から、彩羽さんは死神になりました……ですが、今日はゆっくりしていきなさい」

「はい……」

「じゃあ、僕が天界を案内するよ……失礼しました」

春陽は、女神様に頭を下げ、私を通り越して歩き始める。私は、慌てながら女神様に向かって頭を下げ、春陽の背中を追いかけた。
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