小さな春に彩りを
次の日、私は春陽に連れられて地上にやって来た。春陽の話では、生きている人間が住んでいる場所を「地上」というらしい。
適当に2人で歩いていると、道路の隅で、8歳ぐらいの、半透明の女の子がうずくまっている。私は、女の子に近づいて「大丈夫?」としゃがみこんで問いかけた。
女の子は、驚いた様子で顔を上げた。目には、涙が溜まっている。
「……お姉ちゃんたち、私の事が見えてるの?誰も私のことに気づいてくれなくて……」
「見えてるよ。大丈夫……私たちは、あなたのことに気がついてるよ?」
隣に立っていた春陽は、しゃがみ込む。ふと春陽の方を振り向くと、春陽は悲しそうに微笑んでいた。まるでこの子の気持ちに、すごく共感するように。
「僕らは、死神。困っている霊の悩みを解決する仕事をしているんだ」
「悩みを聞いてくれるの?」
女の子の問いかけに、春陽はうなずく。女の子に目を移すと、女の子の目は輝いていた。
「……実は、無くしてしまった物があって……一緒に探して!」
「無くした物って何?それが分かったら、お姉ちゃんたちが一緒に探してあげるけど……」
「ぬいぐるみ。ママの手作りのぬいぐるみだよ!!」
女の子は、叫ぶ。私は、この子のお母さんの手の器用さに感心した。