小さな春に彩りを
「……最後、どこで見たか覚えてる?」

春陽は、立ち上がりながら問いかける。女の子は「え……うーん」と考え込んでいる。

「あっ……私は、安藤 咲良(あんどう さくら)って言うの!」

咲良ちゃんは、ハッとした顔で私たちに自己紹介をした。私たちも自己紹介をする。

「へぇ……彩羽お姉ちゃんに、春陽お兄ちゃん!2人ともいい名前だね~……あ、そうだ。私がぬいぐるみを落とした場所は、私が死んでしまった場所かもしれない……」

咲良ちゃんは、春陽がさっき問いかけた質問を思い出したかのように答えた。

「それはどこ?」

春陽が問いかけると、咲良ちゃんは「……ついてきて」と言い、歩き始める。私と春陽は、咲良ちゃんの歩くスピードに合わせて歩き始めた。



しばらく歩いていると、交差点に出た。交差点と言っても、都会のようにたくさんの人や車が通っているわけではなくて、あまり人や車が通らないような小さな交差点なんだけど。

交差点の曲がり角の近くにある電柱の下には、たくさんの花が置かれている。その花を、咲良ちゃんは見下ろした。

「私、これを見たくないから、離れた場所に居たの……これを見てると、あぁ……私、死んでしまったんだ……って思っちゃうから」
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