小さな春に彩りを
涙を流しながらそう語る咲良ちゃんを、私は優しく抱きしめた。

「辛いよね……私がこれを見てもそう感じると思う」

咲良ちゃんは、私のローブに顔をうずくめる。少しこうしていると、咲良ちゃんは私から離れた。

私は、春陽の方を振り向いて「よし!探そっか!」と言う。春陽は、真剣な顔でうなずいた。



ぬいぐるみを探し始めて、1時間が過ぎた。まだ、ぬいぐるみは見つかっていない。

「見つからないね……」

「そうだね」

そんなやり取りを春陽としていると、咲良ちゃんは「……ママ!」と叫んだ。

突然、叫んだ咲良ちゃんの方を振り向くと、咲良ちゃんはじっとどこかを見つめている。咲良ちゃんの視線を辿ると、一人の女性が、こっちに歩いてくるのが見えた。手には、何やら黒いものを持っている。

「あの子が咲良ちゃんのお母さん?」

私が問いかけると、咲良ちゃんは力強くうなずいた。

咲良ちゃんのお母さんは、花が置かれている電柱の前で立ち止まると、花をかき分け、手に持っていた黒い猫のぬいぐるみをそっと置く。

「あ!私のぬいぐるみ……ママが持ってたんだ……」

その場でしゃがみ、手を合わせた咲良ちゃんのお母さんはゆっくりと口を開いた。
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