小さな春に彩りを
私が死神になり、5か月が経過した。この数か月は、あっという間に過ぎていく。
気が付けば、春陽とは気軽に話しかけれるような関係になっており、いつしか春陽に恋心を抱くようになっていた。
春陽と公園の出入口付近で立っていると、私の目の前を2人の男子高校生が通り過ぎていく。ふと春陽の方を向くと、春陽はその2人を目で追っていた。
「兄ちゃん……?兄ちゃん!!」
春陽は、2人の男子の背中に向かって叫ぶ。
「ん……?」
1人の背の高い男子が立ち止まり、こちらを振り返った。春陽と同じ桃色の目が特徴の、かっこいい男の子。
「春輝(はるき)、どうしたの?」
もう1人の男子は、不思議そうに背の高い男子を見ている。背の高い男子は、じっとこちらを見つめた後、踵を返して歩き始めた。
「いや、何でもないよ。気のせいだったみたい」
「変な奴」と呟いて、もう1人の男子は、背の高い男子を追いかけるように歩く。
「……春陽、知り合いなの?」
春陽に質問すると、春陽は2人の背中を見つめながら答えた。
「……僕の双子の兄だよ。背が高いほうね。隣にいるのは、兄ちゃんの友達かな」
「そうなんだ……」
「まさか、兄ちゃんに僕の声が届いたとは……」
春陽は、まだ満開になっていない桜を見ながら呟いた。ふと空を見上げると、太陽は傾き、沈みかけている。
「……彩羽は先に帰ってて。僕、やりたいことあるから」
「……分かった」
春陽の言葉に、疑問を抱くが聞こうとはしなかった。聞いてはいけない、そう感じたから。
私に背を向け、走り出す小さな彼の後ろ姿を、私は微笑ましく見ていた。