守りたいから隣にいろ〜幸せな命令〜
秋葉はその場に崩れ落ちるように膝をつき、涙をこぼす。恐怖はいつまでたっても秋葉から離れることはない。

「お母さん……!ヒック……ヒック……」

秋葉は幼い子供のように雷に怯え続ける。雨も雷も止む気配は全くない。

その時、ゆっくりと図書室の扉が開いた。秋葉は誰かが入って来たのはわかったが、固く閉じた目を開けることはしない。ただ泣き続けた。

「秋葉?どうしたんだ?」

驚いたような声が降ってくる。入って来たのはフランツだった。しかし、その声にいつもの棘はなく秋葉を心配しているものだ。

泣き止まないとまた怒られる、そう秋葉は思い首を横に振った。大丈夫と伝えようとしたのだ。

秋葉は涙を止めようとするが、意思に反して涙はあふれ続ける。人が来てくれたことで安心してしまったようだ。

「……ごめ……。すぐ泣き止む……から……」

秋葉がしゃくり上げながら言うと、優しく頭を撫でられた。それはフランツの手だ。
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