人生の続きを聖女として始めます
「それに……弁解する必要あるんですか?」

「それはどういう意味だ?」

「だって、ジュリ様のこと、遠ざけたいのでしょう?殺したいくらいに」

ガブリエラは最後に語気を強めてオレを見た。
咎めているんだろうな。
そりゃそうだ、この国を救いに来た聖女を、会いもせずに暗殺命令を出したんだ。
ガブリエラでなくても咎めるだろう。
悪びれず、表情を変えないオレを見て、ガブリエラはため息をつき首を振った。

「エスコルピオが反旗を翻したことは、誰にとっても最良でしたね。ジュリ様が殺されていれば……獅子王、あなたを救うものは何もなくなってしまう」

「救われようなどとは思ってない。思ってはいけないんだ」

拳を痛いくらい握り、ゆっくりと広げてみた。
この手は何も救えなかった。
だから、オレも救われなくていい。
滅び行く世界とともに、野垂れ死ぬばいい。

「獅子王陛下。そうとも言えないぞ?何のためにジュリ様がやって来たのか……それがわかれば考えも変わる」

「そうだな。取りあえずは会話だ!陛下とジュリ様はもっと腹を割って話すべきだ」

今まで口をつぐんでいたドレイクとロシュが両隣にやって来た。
彼らは軽くオレの肩を叩くと、然程表情も変えずに練習場を出ていった。
後に残ったガブリエラは、2人の考えを肯定するように頷くと、同じ様に練習場を去った。
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