人生の続きを聖女として始めます
その日の夕刻、一番星が現れた頃、私の部屋をガブリエラが訪ねてきた。
慌てて出ると、そこにはレーヴェとエスコルピオも準備万端で立っていて、私達は4人で星見の宴へと向かった。
王宮南館から神殿部寄宿舎を抜け、大神殿をぐるりと回って裏手へ抜ける。
すると、小さな森に出た。
鬱蒼とした森の小道は緩やかな登り坂で、巣へと帰る鳥の鳴き声がどこかノスタルジックに響いている。
前を行くガブリエラと、後ろのエスコルピオの持つランプの明かりを頼りに、私とレーヴェは足元に気をつけながらゆっくりと歩いた。
やがて、坂を登りきり、目に飛び込んで来たのは見晴らしのよい広い草原で、爽やかな風が頬を撫でた。

「すごい………」

思わず一言呟く。
薄闇の中にさわさわとそよぐ緑の波。
その幻想的な風景に釘付けになってしまった。

「ほんとうに、綺麗ですね……」

隣でレーヴェも感嘆の声を出した。

「レーヴェも初めて見るの?」

「はい。僕、外には出たことなくて……王宮の南館と神殿しか知らないんです」

「そうなのね……」

好奇心が旺盛な年頃のはずなのに、王宮以外を知らないなんて。
珍しそうに草原を見つめるレーヴェの横顔は好奇心に溢れていた。
もし、レーヴェがあのままソーントンで暮らしていれば、山野を駆け巡る野生児に育っていたに違いない。
そんなことを考えていると、不意にガブリエラが言った。
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