人生の続きを聖女として始めます
獅子王に手を引かれ、案内されたのは一つ小高くなった場所で、いうなれば草原の絶景ポイントだった。
そこには柔らかそうなブランケットが敷かれている。
大人2人が寝転がるにはちょうどいいサイズで、その用意周到ぶりに私は少し尻込みした。

「ここに座るといい」

獅子王はパンパンとブランケットを叩くと、どうぞ、と促した。
うーん……紳士すぎて、こわい。
でも、それを顔には出さず微笑みを張りつけたまま、言われた通りにした。

「ありがとう。失礼します」

私が座ると、獅子王も自然にその隣に腰かけた。

「さて、このままでは良く見えないな」

「……そ、そうですね?」

獅子王と私は、膝を抱えたまま真っ直ぐ前を見ている。
星を見に来たのに、見ているのは草原だ。

「星を見ようか?」

静かな声に体が跳ね上がった。

「……えっ、えーと、それはー、寝転がって?」

「その方が見やすいと思うが……まさか、緊張しているとか……」

するに決まってるでしょう?
とは言えず、私は強がりを言った!

「そ、そんなわけないでしょう!?」

「ふふ。なら、横になるといい」

「はい、では、遠慮なく!!」

獅子王の不敵な笑みを見ないようにして、勢い良く寝転がった。
一息ついて目を開けると、そこには無数の輝きが満ちていた。
暗闇のキャンバスに広がる煌めきは、今まで見た何よりも素晴らしく、こうして寝転がっていると、星に抱かれているという気分になる。
私は星を掴もうと手を伸ばした。
当然掴めはしないけど、指の間から見える星達が零れるようでそれも美しい。

「綺麗……」

「そうだな」

気付くと、すぐ真横に獅子王がいた。
天から目を逸らし横を見ると、そこにも輝く2つの星がある。
そうだ……昔もこんな風に寝転がって星を見た。
特別室の中からではあったけど、あの時はレグルスがいて、今の獅子王と同じように私を見ていたっけ……。
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