人生の続きを聖女として始めます
「とても大切な人に、教えてもらいました」

寝転がったまま、顔だけを獅子王に向けると、彼もこちらを見ていた。

「そうか。それは君の特別な人か?」

「特別な人でした……ですが、突然私の前から去り……それからは……」

「……わからない?」

「はい。どうなったかは、わかりません……」

「……行方不明か?」

「そういうことになりますね」

「……………………」

獅子王は黙り込み、天を見上げた。
真っ直ぐに獅子座を見つめる金色の瞳は、ゆらゆらと惑うように揺れている。
何でもいいからレグルスのことを知りたい、そう思っていても、本当は真実を知るのが怖いと思う自分もいる。
結果を知ってしまったら?
もうこの世にいないと言われたら?
既に悲劇的な結果を想像していたとしても、それを肯定されてしまえば、もう想像すら出来なくなってしまう。
レグルスがこの世に「いないかもしれない」じゃなく「いない」になってしまえば……。
そう思うと途端に怖くなった。

「すみません。変な話をしました。忘れて下さい」

「…………………」

「さぁ、星を見ましょう!獅子座の横のは何というんですか?」

努めて元気良く言った私を、獅子王は無言で見つめ返した。
そして、暫くするとまた天を見つめさっきと同じように指を指し言った。

「……獅子座の隣、あれはウミヘビを模した姿になっているんだ」

それから、私達はまるでさっきの話など無かったかのように、和やかに星の輝きを堪能した。
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