人生の続きを聖女として始めます
私は、追放を覚悟した。
いや、悪ければ処刑かもしれないとも思った。
でも、体調を回復させた陛下は、私以外の妃を離縁した。
ここに来て媚薬の効果が出たのだ、そう思った。
やはり陛下は私のことだけを愛していた、私のしてきたことは間違ってなかった、そう思ったが……甘かった。
体調が回復してからの陛下は、人が変わったように恐ろしくなっていた。
気に入らない人間を辞めさせ、従わなければ容赦なく斬った。
そして、私は……この北館にほぼ軟禁状態になったのだ。
陛下の訪れもなく、ノーラとルイスと三人だけの生活。
一体私が何をしたのか!!
そう叫んでみても、陛下には届かなかった。
あの頃も今も、陛下は私の元に一度も来てはくれない。
だから、私は、ずっとレーヴェを殺そうと狙っているのだ。

「どうなさいますか?」

ノーラが抑揚のない声で言った。
彼女は侍女であると同時に、優秀な間者でもある。
ノーラもルイスも、スタンフォード家に忠誠を誓った、屈強な戦士だ。

「忌々しい王子と聖女。どちらもこの世から消してしまいましょう。そうすれば、今度こそ、陛下は振り向いて下さるわ」

「わかりました。では先ず聖女を排除致しましょう。あのような小娘、私にお任せ下さればすぐに殺してご覧に入れます」

「まぁ……ノーラ。やはり、お前は使えるな」

「ありがとうございます。あと、ビクトリア様のお耳に入れたいことが……」

ノーラは、一歩近付くと私の耳に口を寄せた。
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