人生の続きを聖女として始めます
北館の玄関前には、2人の兵士が槍をクロスさせて立っている。
きっと立ち入り禁止を表しているんだ、と詳しくない私にもわかった。
隊服はガブリエラと同じだから、近衛兵だと思う。
兵士はエスコルピオを見るとサッと両脇へ移動し、クロスさせた槍を垂直にした。
兵士の顔には少し緊張が見え、エスコルピオが近付いてくる度にビクッと震えている。
顔パスなのは怖いからかな?
それとも獅子王の側近だから?
どちらにしろ、兵士達の間でエスコルピオが恐怖の対象なのは理解した。

「変わりないか?」

「はっ!!問題ありませんっ!」

「暫く聖女様を御通しする。何かあった時のために、すぐ動けるようにしておけ」

「はっ!!」

兵士は元気よく答え、入り口の扉をゆっくりと押し開けた。

中に入るとやや広めの空間があった。
側面には、羽織り物を掛けるためのフックが並んでいたけど、衣類は何も掛かっていない。
そして、日当たりが悪く薄暗かった。
まだ昼なのに暗さは夕暮れのようで、良く見ないと足元も危ないかもしれない。
エスコルピオは入り口の兵士のランプを借り、私の前に立った。

「足元にお気をつけて。手を引きましょう」

「うん。ありがとう」

ランプのぼんやりとした明かりが、少し中の温度を上げた。
広めの室内から次の扉を開け、更に奥へと進む。
そこはダイニングのようになっていたけど、使っている様子はまるでなかった。
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