人生の続きを聖女として始めます
「これはこれは……聖女様では御座いませんか!!」

低く冷たい声がして、真向かいの扉が開いた。
そこには、黒衣のドレスに身を包んだ目付きの鋭い女が立っている。
一目で手練れだとわかるくらいの雰囲気を出し、エスコルピオの背中から殺気が溢れだした。

「ノーラ。ビクトリアはどこだ?」

「お前……卑しい身でありながら、ビクトリア様を呼び捨てか?」

「罪人を敬う必要はないからな」

「ふん。厚かましい」

ノーラはエスコルピオを睨み、その後ろに隠れた私に目を向けた。

「聖女様。ようこそおいで下さりました。ビクトリア様は少し気分が優れないようです。懐妊の影響で」

「それは嘘だな」

すかさずエスコルピオが言った。

「なぜ?どうしてそう決めつける?」

「陛下はビクトリアを嫌っている」

「ふぅん。だが、男と言うものは嫌いな女でも抱けるのではないかな?」

突如始まった大人の会話に私は目を泳がせた。
なんで?なんで、そういう話になった??

「陛下に限ってそれはない。殺しはしても抱くなんてあり得ないのだ」

抱く抱くって、生々しいな……。
いたたまれない……つらい。

「ほう!まぁ、お前はそう思っていても、聖女様はどうかな?」

ノーラは鋭い目を向けてきた。

「えーと、そうですね。双方の主張を元に判断しないとダメだと思うので……こちらの一方的な主張だけでは……」

なんてどっちつかずの回答!!
離婚調停の弁護士か!?
そう自分にツッコミを入れながら、ノーラの目をかわす。
そんな私の様子を見てノーラが嫌らしく嗤った。
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