人生の続きを聖女として始めます
「よそ見とは余裕だな?」

声を出す間もなく、ノーラが攻撃を仕掛けて来た。
倒れた近衛兵を飛び越え、水平に短剣を振るい縦横無尽に繰り出す技に、今は応戦しか出来ない。
後ろにいる陛下とジュリ様に、ノーラを近付けることは出来ないのだ。

「加勢する!後ろは気にせず存分にやれ!!」

ロシュ将軍の声がして、もう一度剣を握り直すと、今度は後ろで陛下の叫ぶ声が聞こえた。
そして、慌ただしく人の走り去る気配が。
陛下がジュリ様を連れて行ったのだな。
ああ、どうか、誰でも構わない。
ジュリ様を……お嬢様をお救い下さい。
私はもう、守るべきものを2度と失いたくはないのです。

「おい、侍女!!ジュリ様に何をした!」

ロシュ将軍は、ノーラの背後に回り込むようにテーブルを飛び越え尋ねた。

「何って……毒で死んでもらおうとしただけだよ」

「軟禁されていて、よく毒が手に入ったな?」

「違うね。最初から持ってたんだ。スタンフォードの者は皆自決用の毒をもっているのさ」

ノーラはふふっと笑い、短剣をクルクルと遊ばせた。
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