人生の続きを聖女として始めます
ーーー(獅子王)

ジュリの手は、どんどん冷たくなってくる。
マデリンの亡骸を抱き締めた時、その体は氷のように冷たかった。
同じ感覚がオレの脳裏に甦り、思わず体がブルッと震えた。

「ボーッとしないで!話しかけて!」

リブラの叱責にハッとして顔を上げる。
それと同時に、医務室の扉が激しい音を立てて開いた。

「お母様!!」

レーヴェだ。
この非常事態に気づかぬはずはないと思っていたが、出来れば見せなくないと思っていた。
レーヴェは驚いたような顔でツカツカと歩み寄り、オレの横に立ってジュリを覗き込む。

「お母様は……大丈夫ですよね?」

驚きの表情は心配に変わった。
顔色の悪さと息の荒さに、レーヴェにもこれがただ事ではないとわかっている。

「当たり前だ……」

「…………僕、何をすればいいですか?お母様の為に出来ること、ありますか?」

泣くこともなく、きゅっと小さな唇を噛み締め、静かにレーヴェは言った。
少し声は震えている。
だが、絶対に泣かないという強い意志があるようだ。

「もちろんあるとも。さぁ、ここでオレと一緒に話しかけてくれ。ジュリに行っては駄目だと呼び掛けて」

レーヴェは力強く頷いた。
最後の言葉は自分に言い聞かせるようになった。
行っては駄目だ。
今度はオレ達を置いて行っては駄目だと。
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