人生の続きを聖女として始めます
「お母様っ!!僕の声聞こえますか!?また、勉強や弓を教えて下さい!良く眠れるあの歌を歌って下さい!………っ、行かないでっ……」

反対側の手を握り、レーヴェはジュリの耳元で思いを振り絞った。

「ジュリ!ジュリっ!!頑張れ!もう少し頑張ってくれ!」

バロンスが来るまで、なんとか踏ん張れ!!
駄目だろ?
まだ、オレは救われてないぞ。
神よ、世界よ、オレの為に遣わしたのなら、責任を持って命を救え!!
殺したいのではなかったかと、笑いたいなら笑え!
どんな醜態を晒してでも、オレはジュリの命を救いたい!
そう悪態をつくと、医務室の扉がまた慌ただしく開いた。

「獅子王陛下!!」

扉から入ってきた初老の男。
それが、元大神官バロンスだ。
彼の後ろにはガブリエラが、呼吸を整えながら立っている。

「バロンス……助けてくれ……もう、お前しか頼れない……」

「はい。話は伺っております。毒の種類も特定し、解毒剤をお持ちいたしております。さぁ、これを……」

バロンスは早口で言い、持っていた白い液体の瓶を手渡した。

「すまんっ!!……よし……」

瓶の口を開け、ひと口、口に含む。
そして、喉を通りやすいようにジュリの頭を持ち上げて、ゆっくりと口移しで流し込んだ。
コクンッ……と小さな喉の音が聞こえ、暫く見守る。
身を乗り出すようにするレーヴェの肩を抱きながら、オレはただ解毒剤が効くのを待った。

「あ……見て下さい!ジュリ様の顔色が良く……呼吸も……!!」

リブラは脈を取り、呼吸を確かめ安堵の息を吐いた。
周りのみんなからも同様の音が聞こえる。

「お母様!!ああ!良かった!良かったですね!父上様っ!!」

レーヴェがオレを振り返る。
その時、どんな顔をしていたんだろう。
レーヴェはオレの顔を見て、自分も顔をくしゃくしゃにして泣いた。
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