人生の続きを聖女として始めます
北館で意識を失ってから、暗い暗い闇の中をさまよっていた。
誰もいないし、何も聞こえない。
手探りで出口を探しても、果てしない闇が何処までも広がるだけだった。

時折、微かに声が聞こえた。
「ジュリ………」と私を呼ぶ声。
それは確かにレグルスの声で、思わず反応してしまった。

「レグルス?」

でも、やはり闇に吸い込まれるだけで答えはない。
それからも執拗に誰かが名前を呼んでいる声が聞こえ、思わず深淵に手を伸ばした。
それと同時に、頭上に光が現れる。
光の中からは、楽しい音楽が聞こえ、芳しい香りが漂っている。
私は……ここに来たことがある。
そうだ、ここは天国、極楽そういった名前の場所だ。
光はどんどん大きくなって、私を迎えにやって来る。
眩しさに動けずにいると、闇の中から、懐かしい声がした。

「聖女!!こちらだ!」

闇の中から突然現れた手が、私の腕を掴み引きずり込んだ。

「え!?ちょっと何すんの?天国行けないじゃない!?」

「君の帰るところは天国じゃない!」

暗闇で知っている声が響く。

「………レグルス?レグルスなの?……やっぱり……あなた……死んでたんだ」

「聖女よ。違う。私はルリオン。彼の兄だ」

「ルリオン!?」

「そうだ。レグルスは私の代わりとして王になった。本意ではなかったのに……」

「代わり……では、今の獅子王がレグルス、なのね?あなたが死んだから?」
< 156 / 238 >

この作品をシェア

pagetop