人生の続きを聖女として始めます
深淵を抜けると、そこは空の上だった。

「ひっ!!…………ぎゃーーー!」

遥か上空からエルナダ国へ向けてのスカイダイビング。
体はエルナダの中心、王宮に向かって凄い速度で落ちていく。
高いところは苦手じゃない。
だけど、バンジージャンプの命綱無し……というこの状況は、生身じゃないのがわかっていても怖い!
上空から見た王宮は真っ白で、一つ一つが整然と作られていて美しいけど、それどころじゃない私はひたすら叫んでいた。

「ぎゃーーーー……ん?あれ?」

落ちていく景色の中、北の朽ちた神殿付近で黒い何かが動いたのを見た。
視力が恐ろしいほど良い私は、動体視力も良い。
『鷹の目』。
亜果利にはそう呼ばれていた。
中2病みたいで嫌なんだけどー、って言うと、更に面白そうに囃し立てられたっけ。
もっと良く見ようと目を凝らすと、黒い物はどうやら人間のようで、何かを地下から運び出している。
土?石?岩?数人で何かをバケツリレーしているみたい。
………さすがに、人の顔までは見えないな……諦めて王宮に視線を移すと、もう建物スレスレまで落ちていた。
ぶ、ぶつかるっ!
目を伏せて衝撃に備えたけど、それは無意味だった。
スゥーと何かに吸い込まれ、ふと気づけば目の前には白い天井。
そして、獅子王とレーヴェがピンぼけするくらい近くで覗き込んでいた。
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