人生の続きを聖女として始めます
ーーー時は過ぎ、麗らかな午後のある時。
ふと見下ろした特別室の窓から、とても美しい亜麻色の髪の女の子を見たんだ。
彼女は、塔を見上げて額に手を翳していた。
眩しくて見えないのか、たまにふらつきながら、背伸びをしてみたり、角度を変えてみたりしながらこっちを伺っている。
その様子がかわいくて、オレは本をめくる手を止めて彼女を見た。
サマンサ譲りの亜麻色の髪。
その女の子がマデリンであることは、すぐにわかった。
そして、この特別室に興味津々なことも。
彼女は毎日同じ時間にやって来て、同じようにこちらを見上げる。
オレも同じ時間にマデリンを見下ろした。
なんだか逢い引きのようだな……。
そう考えた瞬間、何か熱いものが体を駆け抜けた。

『……彼女に会いたい、こんな遠くからでなく、もっと近くで見たい』

これが、レグルス・シエナ・エルナダの生まれて初めての願いになった。
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