人生の続きを聖女として始めます
マデリンを特別室の担当にしてもらいたい。
と、オレは子爵に頼んでみた。
その時、子爵はあまりいい顔をしなかったが、そんなこと落ち着いて良く考えればわかることだった。
爵位も何も、名前すら持たない男に可愛い一人娘を近付けるなんてあり得ない。
オレが親だってそんなことはしない。
そう考えて、子爵に「冗談だから忘れてくれ」と言っておいた。
だが、それから3年後。
マデリンが15歳になった時、子爵が言ったのだ。
「明日から、マデリンをここの担当にしようと思います」
オレは驚いて尋ねた。
「ど、どうしてだ?オレに近付けたくないんだろう?」
「何故です?」
子爵はキョトンとして首を傾げた。
「前に聞いたとき嫌そうな顔をしたじゃないか!?」
「そうでしたか?………あ、ああ!それはマデリンが若すぎたからですよ?」
「若す……ぎた?」
「はい。きちんとあなた様のお世話が出来るようになってからと思いまして」
「そうなのか……そうか……そうだったんだな……」
安心と同時に恥ずかしさが込み上げた。
何を一人で思い込んでいたのか……。
いや、それならちゃんと言ってくれれば良かったのにと、オレは子爵を軽く睨んだ。
それでもまだ、心配事は山のようにある。
「子爵……オレは何も持たない、名前すらない男だぞ……そ、その……そんな男に、可愛い娘を近付けても本当に良いのか?」
「ははっ、何も持たないなどと。あなた様にはちゃんと名前があり、豊かな知識も力もある。それは私がよく知っておりますよ」
ランドル子爵は、目尻の皺を一層深くして微笑んだ。
「マデリンに、あなた様の名前を教えてやって下さい。きっと喜びます」
「名前を……か?」
「はい」
世界からいらぬと言われたこの名を、マデリンに?
喜んでくれるのか?
半信半疑で子爵を見ると、彼はオレの肩をポンッと叩き、優しい目で笑った。
と、オレは子爵に頼んでみた。
その時、子爵はあまりいい顔をしなかったが、そんなこと落ち着いて良く考えればわかることだった。
爵位も何も、名前すら持たない男に可愛い一人娘を近付けるなんてあり得ない。
オレが親だってそんなことはしない。
そう考えて、子爵に「冗談だから忘れてくれ」と言っておいた。
だが、それから3年後。
マデリンが15歳になった時、子爵が言ったのだ。
「明日から、マデリンをここの担当にしようと思います」
オレは驚いて尋ねた。
「ど、どうしてだ?オレに近付けたくないんだろう?」
「何故です?」
子爵はキョトンとして首を傾げた。
「前に聞いたとき嫌そうな顔をしたじゃないか!?」
「そうでしたか?………あ、ああ!それはマデリンが若すぎたからですよ?」
「若す……ぎた?」
「はい。きちんとあなた様のお世話が出来るようになってからと思いまして」
「そうなのか……そうか……そうだったんだな……」
安心と同時に恥ずかしさが込み上げた。
何を一人で思い込んでいたのか……。
いや、それならちゃんと言ってくれれば良かったのにと、オレは子爵を軽く睨んだ。
それでもまだ、心配事は山のようにある。
「子爵……オレは何も持たない、名前すらない男だぞ……そ、その……そんな男に、可愛い娘を近付けても本当に良いのか?」
「ははっ、何も持たないなどと。あなた様にはちゃんと名前があり、豊かな知識も力もある。それは私がよく知っておりますよ」
ランドル子爵は、目尻の皺を一層深くして微笑んだ。
「マデリンに、あなた様の名前を教えてやって下さい。きっと喜びます」
「名前を……か?」
「はい」
世界からいらぬと言われたこの名を、マデリンに?
喜んでくれるのか?
半信半疑で子爵を見ると、彼はオレの肩をポンッと叩き、優しい目で笑った。