人生の続きを聖女として始めます
「レグルス様、今度はこの本のことを教えて下さいませ!」

「いいよ、持ってきてごらん」

細い腕を背の高い書架まで伸ばし、マデリンは目的のものを手に入れ、こちらに小走りでやって来る。
そして、ニッコリ笑って両手でそれを差し出した。

「予言者ラシャークの手記……か。お伽話みたいなもんだな」

「ふふ。お伽話、素敵じゃないですか!聖女様のお話とか、私、好きですよ?」

そう言ってマデリンは夢見るような顔をした。

予言者ラシャーク、彼はエルナダの祖初代獅子王に使えた賢者だと言われている。
魔術を行使し、未来を読み、違う世界への扉を開くことが出来たとか。
そのラシャークの予言の数々は、今、手記として残されていた。
もう千年も前になる予言者の言葉を、オレは正直信じてはいない。
だが、こんなに楽しそうに話すマデリンの夢を潰したくもない。
彼女は、聖女が世界を救うと信じているのだろうか?
予言によると、漆黒の聖女は滅び行く世界を救うために異世界からやって来て、獅子王と愛し合い世界を救う。
そういうことだろうが、滅び行く世界なんて想像出来ないし、異世界って何だ?
ハッキリいってバカみたいだと思っていた。
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