人生の続きを聖女として始めます
マデリンはしきりに美しい聖女の話をするが、オレにとっての聖女とは……ずっとマデリンだけだった。
彼女との日々は、何もなかったオレに希望と誇りを与えた。
そして、ある日。
とうとうオレは、押さえきれなくなった思いを彼女に告げた。
自惚れかもしれないが、拒絶されるなんて考えはなかった。
だって、オレ達はとっくに同じ気持ちだと気付いていたんだから。
そして、思い描いていた通りの展開が訪れ、オレ達の未来はここで慎ましやかに幸せにゆっくりと過ぎていくのだと信じていた。

子爵に2人のことを告げると、思いの外喜んでくれて、すぐに小さな結婚式を挙げることになった。
列席者は、限られた領地の住民とラ・ロイエの囚人達。
特別室での挙式で誰にも会うことは叶わなかったが、それでも、塔の下や監獄の中からのお祝いの声は届いていた。

嬉しいことは続くものだ。
その年マデリンは身籠り、次の年、男の子を出産した。
そして、オレは父親になった。
本当の父親を知らないオレが……と、戸惑うことももちろんあった。
だが、側には父親として素晴らしい手本があることに気付いた。
ランドル子爵、彼がオレの父親だ。
彼がしてくれたように、我が子に接すれば間違いなんてない。
愛情深く、大きく広い。
マデリンも我が子レーヴェも、オレが守るんだ。
そう固く決意した瞬間だった。
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