人生の続きを聖女として始めます
「兄上……兄上!?」

オレの声に、ルリオンは明らかに反応し、ハッキリとこちらを見た。

「レグルス……弟よ……バートラムに連れて来られたのか?」

その声は、まるで自分の中から聞こえてくるような錯覚を起こす。
なんとも不思議な現象だ。

「あ、ああ。そうだが……」

「あれを、信用するな!大切なものから離れるな!今すぐ……帰れ……そして、守れ……」

「それは……」

オレが尋ねようとするのを制したのは大神官長だ。
彼は身ぶりで待ってくれという合図をすると、ルリオンにゆっくりと話しかけた。

「陛下!バートラムが貴方をそんな状態に!?そうなのですね!?」

「バロンス……あれの娘の仕業と思う……体に蓄積する毒……だろうな……最早、時間はない……お前が……レグルスを守って……くれ……ぐ、ゴホッゴホッ」

ルリオンは激しく咳き込み、胸をかきむしった。

「陛下!陛下っ!今、主治医を呼んで参りますので……」

「兄上!」

大神官長とオレはベッドにすがり付き、必死で兄に声をかけた。

「……バロンス、もう良い。それよりレグルスのことを頼む……」

胸を押さえ、ゼイゼイと苦しみながら、ルリオンは大神官長を制した。
そして、今度はオレに笑いかけた。

「……不出来な兄で、すまん……お前の幸せすら守れぬようでは……獅子王の名折れ……だが、父も母も……私も……愛していた……んだ……レグ……ル…」

ルリオンの顔色はどんどん蒼白になり、唇は震えるの止めた。
死は……ルリオンを迎えに来た。

「兄上………ルリオン……ルリオンっ!!」

ただ、涙がこぼれた。
オレには今の事態が何一つわかっていなかったが、一つだけわかっていたことがある。
それは、自分の魂の半分が、たった今消失したということだ。
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