人生の続きを聖女として始めます
レグルスの声は消え入るように小さくなった。
でも実は、レグルスが思うほどには気にしていない。
気にしていたのは寧ろビクトリアとの関係の方で、暗殺未遂のことはもう忘れかけていたくらいだった。
結局暗殺されなかったし、前世に恐ろしい目にあってるから、肝も据わっているのかもしれない。
だけど、今のレグルスなら、なんでも言うことを聞いてくれるのでは?
と、私は心の中で悪い顔をした。

「レグルス。じゃあ一つお願いがあるんだけど?」

「うん?何だ?何でも聞くよ?」

よしっ!思った通り!

「弓の練習場を大きくして?」

「ん?練習場をか?」

「うん。少し距離が物足りなくて……レーヴェだってそのうちもっと上手くなるからあの距離じゃ駄目だわ」

「なるほど……そういえばドレイクがジュリは弓を得意とする武人だと言ってたな。そうなのか?」

武人て何!?
暫く考えても良くわからなかったので、それはスルーして適当に答えた。

「弓は得意よ。その辺の弓兵よりは多分優秀だと思うけど」

「やはり。ジュリ様の腕の筋肉の美しいこと。普段から弓を引いていないとその美しさにはなりませんからな」

ドレイクが満足げに頷いた。

「わかった。それでいいなら簡単だ。だが、それだけではオレの謝罪にはならないからな。他に何かあればすぐにいってもらいたい。ジュリの願いならなんでも叶えるからな?」

「そんなこと言って、後で後悔しても知らないよ?」

不安を煽るように問い掛けた私に、レグルスは問題ないと朗らかに笑った。
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