人生の続きを聖女として始めます
ーーー(獅子王)

目覚めた後のジュリは、暫く医務室に残ることになった。
良くなったとはいえ、死にかけていたのだ。
もしかしたら容態が急変するかもしれない、ということで、バロンスとリブラが医務室に残り、レーヴェとエスコルピオも付き添っている。
出来れば、オレも側にいたかった。
誰にも邪魔されずに、特別室にいた頃のようにずっと語り合いたい。
絶望と憎しみに苛まれた年月を取り戻したい。
だが、オレには先にやるべきことが残っていた。

ビクトリアは北館から牢獄に移されていた。
あれからすぐ近衛に引っ立てられ、有無を言わさず放りこまれたのだ。
牢獄は王宮本館の地下にあり、湿っぽく錆びた臭いがする。
錆びた臭いの正体は血だ。
ここでオレは、スタンフォードの残党を拷問したり殺したり、ジュリにはとても言えないことをしていた。

そして、今回も場合によっては同じことをしようと思っている。
愛する妻を2度も失うところだった。
この元凶を作った女に、かける情けなど持ち合わせていない。
獅子王暗殺という大罪と、聖女暗殺未遂という大罪。
その重罪人ビクトリアとオレは今、対峙している。
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