人生の続きを聖女として始めます
私が15になった時、父であるランドル・ソーントンに特別室に連れてこられた。
それまで、特別室の担当は父か執事のデュマで、近寄ってはいけないと言われていた。
いけない。と、言われれば近付きたくなるというもの。
私は、父やデュマに内緒で塔の下によく来ていたのだ。
貴人とはどのような人なんだろう?
女性なのか?男性なのか?
そして……どうしてここに隔離されているのか?
様々な疑問が好奇心を擽った。

「マデリン。今日から特別室の担当はお前だよ?」

「えっ!?……よろしいのですか?」

「ああ。特別室の御方がな……お前と会いたいんだそうだ。下から見ているのでは首が疲れるだろう?と仰ってな?」

「なっ!!知っていたのですか!?」

なんということ……。
誰にも気付かれていないと思っていたのに、まさか本人に見られていたなんて!

「そういうわけだ。ほら、これがここの鍵」

父は少し錆びた小さい鍵を私に手渡した。

「はい……あの、具体的に何をすれば?」

配膳しかしたことのない私は、困って父に尋ねた。

「朝昼晩の食事と、午前と午後のティータイム、その間の話し相手をして差し上げなさい」

「話し相手……わかりました。それだけですか?」

「基本はな。だが、臨機応変に対応してくれ。もし、部屋に残るようにと言われたらそのように……決して自分から帰ると言わぬように」

「………はい」

父の様子から、特別室の貴人は、やんごとない人物であると推察した。
失礼のないようにしなくては。
私は決意を新たに、鍵を扉の鍵穴に差し回した。

ゴトン。

鍵は思ったより重い音がした。
音の重さと、この任務の重要性は比例している。
そう思い、ゴクリと息を飲んだ。
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