人生の続きを聖女として始めます
それは可能性の一端だ。
だけど、皆の顔を見るとそれは当たりだろう、と思ったようだ。
更にドレイクはガブリエラに向かって言った。

「ビクトリア救出が目的の一部とすれば、本命は?」

「あくまでも目的は他にあるのだと思う……スタンフォードがそれだけで動くとも考えづらい」

全員が黙って思案に耽った。
私にはバートラム・スタンフォードがどんなことを考えているかなんて見当もつかない。
一度だけ会ったときは、嫌なヤツという印象しかなかったし、レグルスがいないことの方が重要だったから。
不安な気持ちのままレグルスを見ると、ちょうど彼が発言をした。

「そもそも、毒矢事件を今起こしたのはなぜだ?」

「……突然来た聖女が邪魔になったから?とか?」

リブラが答えるが自信はなさそうだ。
それだけではない、と、リブラ自身もわかっているからだと思う。

「……逆ではないかな。寧ろ、聖女が来たことで奴らは動いた……動くことが出来た。噂で誘き寄せ……」

腕を組み、斜め上を見上げて訥々と語っていたドレイクは、急にチェス盤を取り出し駒を並べ始めた。
その行動に声を上げたものはいなかった。
ドレイクの閃きに皆が期待していたからだ。

「聖女を白のクイーンとして……ポーンで誘い出す。誘いに乗れば、次はナイトとルークが挟み込んで……これは、白のナイトに倒され……とすれば?……黒のクイーンはどこだ!……隅か……では黒のキングは……」

ドレイクは独り言を繰り返し、白と黒の駒を激しく入れ換える。
いつの間にか全員が身を乗り出して注視し、私もその輪に加わった。
今まで全然わからなかったけど、チェス盤を見ていれば敵の動きが良くわかる。
つまりこの聖女を誘い出しての暗殺未遂は、玉砕覚悟でビクトリアをあるところに移動させる為。
黒のキング(バートラム)の動きを見ると、側面から白のキング(レグルス)を狙える位置につけていた。
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