人生の続きを聖女として始めます
全員がチェス盤の意味を理解した。
バートラムは極近くでレグルスを狙っている。
ビクトリアを牢獄へと移動させ逃す手筈を整え、逃げると同時にレグルスを討つ。
恐らく、随分前から進行していた作戦で、ノーラやルイスはその機を窺っていたんだ。
レグルス達が他国へとバートラムを探して、戦争をしている間に、着々と進めていた……。
途端に寒気がした。
バートラムという男は、何がなんでもレグルスを殺す気なのだと。
青い顔をした私に、レグルスが寄り添い肩を抱いた。

「心配するな。もう君に手出しはさせない」

「違う。私じゃなくて、あなたの方が危ない!!バートラムはレグルスしか標的にしてない!」

叫んでしまった。
でも、そうしてしまうほど怖かった。
レグルスが私を失った時、どれ程の絶望が襲ったのか……それを疑似体験した気分だ。
もし、目の前でレグルスが死んだら?
私だって彼と同じ様にバートラムを、神や世界を呪う。

「オレを狙うなら都合がいい。向こうから来てくれるんだからな。最悪相討ちで討ち取れれば御の字だ」

呑気に言うレグルスに腹が立った。
彼は、この5年の間に自暴自棄になり自分を粗末にし過ぎてる!
自分が思うばかりで、自分を思う人のことをまるで考えていないんだ。

「ちょっと来てっ!!」

怒りが振り切れた私は、隣の部屋にレグルスを促した。
ケンカを売るような感じになったけど、そんなこと気にしてられない。

「な、なんだ?どうしたんだ?何をそんなに怒ってるんだ?」

後ろからついてくるレグルスは、問いかけながら後ろ手に扉を閉めた。
閉まる瞬間、残された皆さんそれぞれの表情が見えて、なんとも言えない気分になった。
「大変ですけど、よろしく……」
そんな顔を全員がしていたから……。
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