人生の続きを聖女として始めます
机にドレイクが置いたチェス番は既に片付けられ、その代わりに王宮近辺の地図が新しく用意されていた。
それはエルナダ全土の地図より拡大されていて、いろんな建物の位置関係が良くわかる。
北側の別荘と神殿には大きなバツ印が付いていて、さっき話していた西側市民街は本拠地候補から外れたのか、何の印もついていない。

「では先程の続きから」

北側神殿をゆっくりと手でなぞりながら、ドレイクが説明を始めた。

「本拠地候補を吟味した結果、市民街には空き家はあるものの、潜伏するほどの広さがないことがわかりました。市民の目もあり、顔が割れているバートラムが市民街に潜伏することはほぼ不可能です」

「だとすると一択か」

レグルスは腕を組み北側の地図を睨む。

「そうです。おそらくここ。神殿跡」

「死人しかいないからな……誰にも密告はされない……だが……」

「ええ。あの王族の墓地には、ルリオン様と………」

レグルスに次いでバロンスが言った。
その表情は固くとても辛そうだった。

「ランドル子爵とマデリン様の御遺体が……」

その瞬間レグルスの目付きが変わった。
それはもう、人を射殺せるかのような眼力。
リブラなんて「ひっ!」と叫んだ後、口をパクパクさせて、倒れそうになっていた。
それにしても、王家に縁もゆかりもないのに、私達の遺体をそこに埋葬するなんて。
マデリンの遺体と引き籠っていたという話は聞いたけど、それほどまでに彼は子爵家を大切に思っていてくれた、そう思い胸が熱くなった。

「……近衛を送って、確保しますか?」

ガブリエラの遠慮がちな一言に、レグルスは低く唸るように言った。

「いや……今度は絶対に逃げられるわけにはいかない。勘づかれないように泳がせて、迎え撃つ」
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