人生の続きを聖女として始めます
「あ、申し訳ありません。陛下暫くお待ちを……聖女様、先程何故地下のことをお尋ねに?」

この質問にどう返したらいいか悩んだ。
臨死体験中だったもんで……いまいち自信がないというか……。
だとしても、ここは正直に話した方がいいだろうね。

「あの、実は、北の神殿付近で黒ずくめの人が地下から土やなんかを運び出すのを見て……」

「えっ!?いつです?」

「………毒矢事件から意識が戻る途中で……」

「……それは……あの……」

バロンスは眼を丸くした。

「うん。だからね、あまりあてにならないかもしれな………」

「聖女の力ですっ!!」

私のか細い声に力強く被せてきたのは、ウサギ大神官だ。
彼はいつか私が言った言葉をそっくりそのまま繰り返した。

「聖女は人知を越える存在なのです!ジュリ様が見たというのなら、それが夢であれなんであれ御告げなのです!!」

リブラは両手を広げ天を仰いだ。
そんな無茶な……という意見は誰からも出なかった。
それどころか、レグルスと臣下の皆さんは納得の表情で頷いている。

「うむ。リブラの意見はもっともだ。聖女様、貴重な御告げをありがとうございます」

バロンスは優雅に微笑んだ。

「いえ、お役に立てて光栄です」

うん、もうファンタジーは全部聖女の力でよろしく。
私も優雅に微笑んでおいた。

「陛下、聖女様が仰った地下墓地、昔そこからこの王宮地下牢への通路がありました」

「なんだと……ふん……狙いが見えてきたな」

「はい。おそらく地下墓地からその通路を復活させて虚をつき侵入、そして、ビクトリアを救出し、陛下の命を……」

「それで地下牢へビクトリアを移動させたか……」

ガブリエラも全てが繋がったように頷き、レグルスを見る。
全員の視線を集める獅子王陛下は、不敵な笑みを浮かべ鷹揚に言った。

「侵入場所がわかるなら先手を打ちやすい。作戦を立てることも容易だろ?さぁ、積年の恨み、晴らしてやろう!」
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