人生の続きを聖女として始めます
「ジュリ様。例の弓、改良したものを鐘楼へ運んであります」

全速力で駆けながらガブリエラが言った。

「ありがとう!!忙しいのに無理言ってごめん!」

「いえ、大丈夫ですよ。職人は大変そうでしたけど、遣り甲斐があるといっておりましたしね?」

「そう?それなら良かったけど……」

弓の飛距離を伸ばすために、一般的な弓兵が使う弓の改良を頼んだのだ。
量産型の弓は私には大きすぎたし、どうも飛距離がいまいちだった。
もっとコンパクトで、威力の高いものが欲しいとわがままをいったのだけど、職人さん達は見事に期日まで仕上げてくれたみたい。

「しかし、ほんとうにあれで良いのですか?職人が言うにはかなり重量が嵩んだとか……」

「いーのいーの。重いけど飛ぶよ?それが使えるくらいの筋力は持っているし?」

「そうですか。ジュリ様がそう仰るなら」

そう言ってガブリエラは自身の剣に手をかけた。
その剣の柄はシルバーで、とても美しく輝き、鞘にはガブリエラの瞳と同じ緑の石があしらわれている。

「綺麗ね、その剣」

「ああ!ありがとうございます。これはヒューイット家がその昔獅子王から賜った宝剣です。切れ味は抜群、刃こぼれしないのが自慢です!」

ガブリエラはその宝剣の石と、同じ色の瞳を輝かせた。
彼女がいつも持たない宝剣を差しているのは、スタンフォードとの戦いがそれほどの意味を持つ、ということなのだろう。
つまりこれは、ヒューイット家の意地でもあり受けた恥辱への報復なんだ。

「ここで終わらせよう!絶対に!」

「はっ!このガブリエラ・ヒューイット、ジュリ様を必ずお守りします。そして、エルナダの敵、スタンフォードを壊滅させてやりましょう!!」

頷き合った私達は、夕暮れの薄闇の中を鐘楼へ向かってひた走る。
今頃地下牢では、激しく剣を交えているかもしれない。
レグルスや皆の無事を祈りつつ、私は駆けた。
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