人生の続きを聖女として始めます
ーーー(レグルス)


部屋を出てロシュとドレイクと共に地下牢へと走る。
途中で合流したバロンスから剣を受け取り、今度は4人で並走した。
あの頃より年老いたバロンスを気にしたがそれは取り越し苦労だったようだ。
彼は長いローブをものともせず、壮年のような走りでついてくる。
きっと、それは執念だ。
ずっと見守ってきた我が子のようなルリオンを殺され、それを助けることが出来なかった悲しみ。
その悲しみを呑み込むほどの憎しみを燃料にして、バロンスは走っている。
オレも同じ。
走る振動と高鳴る鼓動は重なってオレを鼓舞する。
戦う前の戦士とは、こういうものなのだ。
幾度となくこの気分を味わい、その度に肩透かしを食らってきた。
絶望を味わい、辛酸を舐めてきた日々。
だが、今回は違う。
喉元は押さえた。
後は食らい付くだけだ。

一階を経て、地下牢への入り口を前にしたオレ達は一旦足を止めた。
そこには息を潜めて号令を待つ兵士達の姿。
そして、その階段を降りた先には憎むべきバートラム・スタンフォードがいる!
いつも薄暗い地下牢は、無数の灯りで照らされているようだ。
予め衛兵の交代時間を長くしてあり、その隙を狙いやすいようにしてやったのだ。
敵のいない牢内で、親子の再会が繰り広げられているのだろうか?
まぁ束の間の幸せを噛み締めるがいい。
オレは剣に右手をかけ、左手で合図を送った。
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