人生の続きを聖女として始めます
ーーー『行け』

ロシュと親衛隊が先頭に立った。
階段を一足飛びに降りる彼らは、降り立った先ですぐに戦闘になったようだ。
キン!という刃が交わる音がし、ドレイクとオレも階段を降りた。
地下牢の間取りは単純だ。
短い廊下の前に5つの牢獄があり、その奥にビクトリアが捕らえられている。
ロシュとドレイクが乱戦の中に身を投じた。
すると、黒ずくめのスタンフォード兵達は最奥の主人を守るべく後退した。

ーーーーー見つけた。
その姿を捉えたとき心の中でどす黒い声が渦巻いた。
愛する妻を、敬愛する父を、誇り高き兄を殺した男を漸く見つけた、と、怨念が叫んでいる。

「バートラム、スタンフォードォ!!」

地下牢にオレの声が反響すると、激しい鍔迫り合いは止み、辺りは静かになった。
スタンフォード勢はバートラムの前に集まり、エルナダ勢はオレの脇を固める。

「おや、これは獅子王陛下。お元気そうでなりより」

バートラムは既に牢獄から救いだしたビクトリアを背に、ニヤリと笑った。
それは余裕があっての笑いではない。
元よりバートラムはこういう不遜な物言いをする男だ。
5年前初めて会った時、この態度に激しい嫌悪感を抱いたのを思い出す。
今も昔もオレはこの男が大嫌いだ。
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