人生の続きを聖女として始めます
「ジュリ様!!南館中庭から合図が!!準備が整ったようなので、私はそちらに向かいます!」

鐘楼の最上部で、宝剣を今一度握りながら、ガブリエラが勢い良く言った。

「わかった!ここは任せて」

「はい。では……御武運を!」

「ガブリエラも気を付けて!」

力強く頷いて去るガブリエラを見つめ、私は弓のチェックをした。
エルナダの弓職人の腕は確かだった。
注文通りの仕上がりに満足しながら、合図のあった中庭を注視した。
たくさんの松明が円形に焚かれ、その中心には大きな楡の木がある。
そこが、スタンフォード父娘を追い込む最後の場所になっていた。

私の仕事は、この鐘楼からバートラム父娘を射て、進路を絶ち動きを止めることだ。
人に向かって射つのは、禁止行為であり、決して行ってはならないこと。
それは重々わかっているし、怖くて手も震える。
微妙な調整で、体を狙わず衣服だけを射ることを目的としても、もしかしたら狙いを外れてしまうかもしれないのだ。
でも、レグルスの怒りやバロンスの悲しみ、ガブリエラやロシュ、ドレイクの今までの悔しさを思えば、そんな不安も吹き飛んだ。

『大丈夫、君は失敗しない』

作戦立案時、レグルスはそう言った。
その言葉を胸に、弓を握る指に力を込め、大きく深呼吸をした。
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