人生の続きを聖女として始めます
やがて中庭に2つ人影が現れた。
一つはふわりとした衣を纏う小さめの影、もうひとつは大柄で太めの男だ。
煌々と焚かれた松明は2人の顔をくっきりと浮かび上がらせる。
いつか見た嫌味な男バートラムと、祝宴の時に見たビクトリアを確認し、弓を構えた。

その後すぐ、中庭は俄に騒がしくなった。
バートラムとビクトリアの前からガブリエラ、後ろからはロシュとドレイクが剣を手に迫る。
追い込まれた2人は楡の木を背にし、私は素早く矢をつがえた。
まず、一射目でビクトリアのドレスの裾を狙い楡の木へ縫い付ける。
バランスを崩したビクトリアは派手に転け、驚いたバートラムがキョロキョロと辺りを見回した。
そして、二射目をバートラムの袖口へ放つ。
矢は狙い通りの場所へ到達しバートラムの腕も楡の木に縫い付けられた。
どこから飛んでくるかわからない矢に、スタンフォード父娘は慌てふためいた。
それは、遠くの大鐘楼からでも良くわかった。
レグルスの作戦は見事にバートラムの恐怖を煽り、彼らは必死で頭を抱えて身を守ろうとしている。
本当はもっと矢を打ち込むつもりで準備していたけど、その必要はなくなった。
中庭から松明を振り終了の合図をするガブリエラを見て、私は弓を下ろした。
後は、悪党に相応しい最後をレグルスが用意するはず。
ほっと胸を撫で下ろすと、大鐘楼の階段を下った。
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