人生の続きを聖女として始めます
「陛下、すぐに市民広場でしょうか?それとも、明日……」

ガブリエラが采配を仰いだ。
市民広場は刑の執行等を執り行う場所で、西側市民街の入り口にある。
民も帰路に着き、人影も疎らだろう。
日は既に暮れていたし、断罪をするには相応しくないと思ったのかもしれない。

「いや、今から行う。市民広場へ松明を持て。民にもそのように伝えろ!」

「はっ!!」

言うや否やガブリエラは踵を返し、近衛兵の伝令に布令を出した。

西門から王宮を出て、市民広場へと場所を移すと、断罪の準備は既に整っていた。
絞首刑台が2つ。
松明に照らされて不気味に佇んでいる。
近衛兵の布令も民に行き渡っていて、そこには大勢が詰め掛けていた。
民がこそこそと囁くその内容は、バートラム・スタンフォードへの嫌悪と王による圧政への不満だ。
この五年、バートラムを捕らえることにかまけ内政はほったらかしだった。
民がどうなろうが知ったことか、どうせ滅びる世界なのだから、と考えていた。
だが、もうそうはいかないことを知っている。
オレは決断をしなければいけない。
スタンフォードを断罪したあと、オレ自身も世界を揺るがせた責任を負わなくてはならない。

「陛下。よろしいですか?」

ガブリエラが問いかけた。
全ての準備が整ったのだ。
オレが頷き返すと、バロンスが朗々と罪状を述べる。
兵達がスタンフォード父娘の刑の準備を始め、民が少しずつ静かになった。
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