人生の続きを聖女として始めます
オレはバートラムから目を逸らし、広場に集まった民を見た。

「聖女が降臨し、予言は果たされる。エルナダの恒久平和はこれからだ」

民の誰もが知っている予言。
その効果が絶大だと、オレは初めて知った。
広場には口々に聖女を讃える声が上がり、それは地響きのような震動を起こした。
王宮でジュリは聞いているだろうか?
皆が君を讃えて叫んでいるぞ?
そしてオレは生まれて初めて神に、世界に感謝した。
ジュリをマデリンを……送ってくれてありがとうと。


沸き立つ歓声の中で、バートラムはうちひしがれたように項垂れた。
思ったように民もオレも操れなかったのだ。
ここでもう観念したのかもしれない。
ビクトリアは捕まってからずっと、小さな声で譫言を呟いていた。
内容は良くわからないが、どうやら誰かに何かを話しかけているようで、薄ら笑いすら浮かべている。

オレは振り返りながらバロンスを見、刑の執行を促した。
ついでガブリエラとロシュ、ドレイクを見る。
彼らは、このいかにも王に相応しくない男に見事な敬礼をしてみせた。

バロンスが一歩進み出て片手を上げる。
そしてこの夜、エルナダから2人の罪人が消えた。
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