人生の続きを聖女として始めます

「亜……果利？うそ……亜果利！？」

それは懐かしい友の姿だった。
彼女は私と同じ『聖フィオーナ学園アーチェリー部』のジャージを着て、ニッコリと笑っている。

「久しぶり……ん？いや、そうでもないか？時間の流れはあやふやだからね。向こうはあれから３０分も経ってないけど、こっちは随分経ったんじゃない？」

一体何を言ってるんだろう？
亜果利の言動は、私の理解を超えていた。
向こう、とか？こっち、とか？
まるで、世界がいくつもあるみたいな亜果利の言葉に私は茫然とした。
そんな私を押し退けながら、リブラは一歩進み出て亜果利に問いかけた。

「あ、あの……あなたは一体……聖女様？ではありませんよね？」

その問いに亜果利は豪快に笑った。

「あははっ！聖女じゃないよ！あえて言うなら予言者代理だね」

「予言者代理？？」

私もリブラもレーヴェもエスコルピオも……その場の全員が首を傾げた。

「私の名を聞けばわかるかな？亜果利・フィオーナ・西宮だよ」

「フィオーナ！？」

叫んだのはリブラや神官達だ。
学園創立者の遠縁にあたるのだから、フィオーナはついてて当然でしょ？
何でそれに驚くの？
私は更に首を傾けた。

「もしかして、あなたは予言者ラシャーク・フィオーナと何か繋がりが！？」

リブラはツカツカと亜果利に近付き、好奇心半分、猜疑心半分という顔をした。
ラシャーク・フィオーナ……え、それって予言者ラシャーク！？
ラシャークのラストネームがフィオーナ！？
そんなの初めて聞いたわ！

「その通り。私はラシャーク・フィオーナの子孫。向こうの世界に何人かいる、そのうちの一人。彼の記憶と力を少なからず受け継いでいる」

亜果利は薄茶色の瞳を煌めかせた。
その姿は、よく知ってる親友の亜果利ではあったけど、どこか違う気もした。