人生の続きを聖女として始めます
「ジュリ様にルリオン陛下を諌めて頂きたいのです。早期に戦争を止め、国内の様子に目を向けて下さいと……」

「……はぁ。諌めるって……そんなこと臣下や側近の仕事では?」

私は、お茶を飲みながら言った。

「言って聞いてくれる方なら苦労はしません。陛下は……いつの頃からか全く別人のようになってしまって、誰のことも信用しなくなりました。側仕えの者を大勢クビにし、神官達も半数が辞めさせられ、三人いたお妃様も一人だけ残してあとは実家へと返されました。そして、他国へかなりの数の密偵を放ち、ある政治犯の情報があると自らが先頭を切って乗り込むのです。他国との条約など守らず、強引に領地に侵入し、政治犯を炙り出すためだけに辺りを火の海にしたことも……今ではこの大陸の争いの大半は、エルナダのせいです。そして、度重なる戦のせいで国は疲弊し国力は衰退の一途を辿っています……陛下は陛下で、戦場で死に場所を探しているように戦い続けて……」

リブラは長々と喋った後、顔を歪めて拳を膝に叩きつけた。
扉付近に佇むヴィスも、心配そうにリブラの背中を見つめている。
噂に聞いていたルリオン陛下とは随分違うな、と私は首を傾げた。
会ったこともないし、そこまで良く知らないけど、賢いと評判じゃなかったっけ!?

「あの……私が言って聞くと思います?どこから来たのかわからない女の言葉を」

「思いません」

リブラは間髪入れず答えた。

「じゃあ、無理ですよね!?」

負けじと間髪入れず返した私に、リブラはまぁ落ち着いて、と笑顔で宥めた。
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