人生の続きを聖女として始めます
「ジュリ!!どこだ!!ジュリ!!」

大声で叫ぶレグルスの声がして、ドタドタと何人もの足音がする。
市民広場から、皆が帰ってきたんだ。
途端、扉がバタンと開き、驚いた顔をしたレグルスが大急ぎで走り寄ってくる。
ガブリエラとバロンスも一緒だ。

「何だこれは!?誰だこいつは!!」

レグルスは私とレーヴェを背に庇うと、亜果利を睨み付けた。
面倒くさいのが来た……。
神や予言やファンタジーを信じないレグルスが、この状況をちゃんと理解出来るハズがない!

「エルナダの王様?て、ことは、樹里の旦那様?」

亜果利は飄々と言った。
さすが、予言者代理、彼女は何でも知っているらしい。

「う……喋ったぞ?」

レグルスは怖々と私を振り返った。
彼の背中からひょいと顔を覗かせると、亜果利は酷くウザそうにレグルスを見て言った。

「私は……あー、もう説明めんどうだから無し!後で誰かに聞いて……で、話の続きね?」

すると、何を察知したのかレグルス、レーヴェ、エスコルピオが私を包囲した。

「…………わかってるってば。樹里を無理矢理に連れ帰ろうなんて思ってない。それに本人も帰ろうと思ってないみたいだしね……樹里?」

私を見て亜果利は微笑んだ。

「うん。私の生きる場所はここだと思う」

両親とは疎遠だったし、それほど未練もない。
ここまで育ててくれたのは感謝しているけど、どうしても向こうに戻る気にはなれない。
私は薄情だろうか……。
でも、レグルスやレーヴェ、エスコルピオ、皆と離れて生きる未来なんてもう考えられなかった。
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