人生の続きを聖女として始めます
「……レグルス……そっちは……終わったのね?」

私の右手を握り、まだ心配そうにこちらを見るレグルスに声をかけた。

「ああ。全て終わった」

「……少しは、心が軽くなった?」

「そうだな……漸く区切りをつけられた。これで前に進めるよ。本当に重要なのはここからだから……」

見上げたレグルスは、とても晴れやかな顔をしていた。

「まずは国を建て直す。ルリオンとしてじゃなく、レグルスとして即位し今度は全うな政治をするよ。そして、父としてレーヴェと向き合い、夫としてジュリを愛する」

レグルスはレーヴェと私の顔を見て優しく笑い、私達を同時に抱き締めた。
大きな胸の中で、私はレグルスに寄り添い、レーヴェと顔を見合わせる。
すると、ミニチュア獅子王はすこし照れて俯いた。

「本当は、王になりたくないんじゃなかったの?」

私は思ったことを口にした。
ラ・ロイエにいた頃、彼は権力に興味がないように見えたから。

「王というものにそんなに興味はない。だが、聖女は獅子王と結婚するという決まりだ。ならば、何がなんでも王になるさ。ジュリはオレの聖なる妃だろ?」

「うーん、聖なるっていうのはどうかな……恥ずかしいから、普通の妃でいいです」

そう答えるとレグルスは高らかに笑った。
その姿は獅子が吠えるようで、とても誇り高く自信に満ち溢れている。
目を奪われてしまう……今も昔も、レグルスは私の心を捉えて離さない唯一の存在なんだ。

ふと周りを見回すと、片付けの途中だった松明も神殿兵によって地下倉庫に仕舞われ、周囲には私達しかいなかった。
しんと静まり返った大神殿で、私達4人は顔を見合わせて笑う。
その幸せの朗笑は、エルナダの闇を裂く新しい朝への希望になった。
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