人生の続きを聖女として始めます
「さぁ、私は外にいるから。挨拶をしてくるといい」
笑う父に背中を押され、一歩踏み出し後ろ手に扉を閉めた。
部屋は、特別室というのが相応しい作りになっている。
円形に広がった部屋は窓が多めに作られていて、採光も充分でとても明るい。
間仕切で3区画に仕切られて、書斎、寝室と湯浴み用の部屋まで完備されている。
私は部屋の様子に心を奪われ、当の本人を探すのを忘れていた。
慌てて、視線を滑らせたけど、誰も見当たらない。
仕方なくその辺りをうろうろし、間仕切の後ろや、書斎の机の下を探す。
すると、クスクスと押し殺したような笑い声が背後から聞こえた。
「え!?」
短く叫んで振り向いた。
振り向いた先には、鮮やかなブルーのタイが間近あり、驚いて後ずさってしまった私は、足が絡まり体がぐらついた。
「危ない!!」
ブルーのタイがまた近づいた。
傾く背中を支えてくれている手は、そのタイの持ち主で、特別室の主だ。
私は、不躾だと思いながら恐る恐る顔をあげた。
「こんにちは、塔の下の姫君。オレはレグルス」
「あっ、あの、私、マデリン・ソーントンです」
「ごめんな、驚かすつもりはなかったんだが。こんなことしか楽しみがなくてな」
そう言って笑う彼の瞳に釘付けになった。
それは、初めて見る金の瞳だったから。
レグルス……彼は紛れもない王族で、しかも「獅子王」の名を継げる人物……。
わかった途端私は身震いをした。
だって、今、私を支えている人が王族だなんて!なんと恐れ多い!!
「いえ、あのありがとうございます。もう大丈夫ですので……」
「ああ、そうだな。お互いおかしな体勢で挨拶をしてしまったね」
彼は屈託なく笑い、私を抱き起こすと大きな背を屈めて覗き込んできた。
「では、改めて。マデリン、これからよろしく。オレのことはレグルスと呼んでくれ」
「は?いえ、それはちょっと……」
「何で?」
「呼び捨ては、いけません、多分……」
王族を呼び捨てはダメでしょう?
「うーん、でもなぁ。オレはただのレグルスだし。それ以外の名前はないし」
「レグルス様とお呼び致しますね」
「様かぁ……まぁいいけど。そのうち様をとってくれよ?」
彼は照れ臭そうに頭をかいた。
「……善処致します」
無理だと思いますけど。
と、心の中で呟き、にっこりと微笑んだ。
笑う父に背中を押され、一歩踏み出し後ろ手に扉を閉めた。
部屋は、特別室というのが相応しい作りになっている。
円形に広がった部屋は窓が多めに作られていて、採光も充分でとても明るい。
間仕切で3区画に仕切られて、書斎、寝室と湯浴み用の部屋まで完備されている。
私は部屋の様子に心を奪われ、当の本人を探すのを忘れていた。
慌てて、視線を滑らせたけど、誰も見当たらない。
仕方なくその辺りをうろうろし、間仕切の後ろや、書斎の机の下を探す。
すると、クスクスと押し殺したような笑い声が背後から聞こえた。
「え!?」
短く叫んで振り向いた。
振り向いた先には、鮮やかなブルーのタイが間近あり、驚いて後ずさってしまった私は、足が絡まり体がぐらついた。
「危ない!!」
ブルーのタイがまた近づいた。
傾く背中を支えてくれている手は、そのタイの持ち主で、特別室の主だ。
私は、不躾だと思いながら恐る恐る顔をあげた。
「こんにちは、塔の下の姫君。オレはレグルス」
「あっ、あの、私、マデリン・ソーントンです」
「ごめんな、驚かすつもりはなかったんだが。こんなことしか楽しみがなくてな」
そう言って笑う彼の瞳に釘付けになった。
それは、初めて見る金の瞳だったから。
レグルス……彼は紛れもない王族で、しかも「獅子王」の名を継げる人物……。
わかった途端私は身震いをした。
だって、今、私を支えている人が王族だなんて!なんと恐れ多い!!
「いえ、あのありがとうございます。もう大丈夫ですので……」
「ああ、そうだな。お互いおかしな体勢で挨拶をしてしまったね」
彼は屈託なく笑い、私を抱き起こすと大きな背を屈めて覗き込んできた。
「では、改めて。マデリン、これからよろしく。オレのことはレグルスと呼んでくれ」
「は?いえ、それはちょっと……」
「何で?」
「呼び捨ては、いけません、多分……」
王族を呼び捨てはダメでしょう?
「うーん、でもなぁ。オレはただのレグルスだし。それ以外の名前はないし」
「レグルス様とお呼び致しますね」
「様かぁ……まぁいいけど。そのうち様をとってくれよ?」
彼は照れ臭そうに頭をかいた。
「……善処致します」
無理だと思いますけど。
と、心の中で呟き、にっこりと微笑んだ。