人生の続きを聖女として始めます
「わぁ!ほんとですか?僕、お母様がいなかったから……本当に嬉しいんです!一緒に寝たり、食事をしたり、遊んだりしてくれるんですよね?」

レーヴェの金色の瞳がキラキラと輝いた。
それが一瞬、レグルスの瞳と被って見えて私は目を瞬かせた。

「どうしました?目が痛いのですか?」

レーヴェが心配して私の膝に乗り目元を優しく撫でる。
その可愛さに、たまらずギュッと抱き締めてしまい彼は「あ」と小さく声を上げた。
その瞬間、どこにいたのかどこから現れたのか……突然男が目の前に現れ私を嗜めた。

「殿下をあまり強く抱きませんよう」

その声は喉が半分潰れているかのようにしゃがれている。
だけど、それよりも私が驚いたのは、顔を覆った鉄仮面だ。
それは顔の全面を覆い、僅かに見えているのは目と口のみ。
この突然現れた鉄仮面に、私よりもリブラの方が気絶しそうになっていた。

「エッ、エスコルピオ殿っ!?」

リブラの叫びに、鉄仮面はグルリと振り返り言った。

「リブラ大神官、聖女召喚、誠におめでとうございます。獅子王陛下にもすぐに伝令を出しましたので、間もなく返信があるでしょう」

「はっ、はい。どうも、お手数をお掛け致しまして……」

エスコルピオの抑揚のない声に恐れをなし、リブラは腰が引けている。
出来るだけエスコルピオから離れたい、そんな感情が態度に表れていた。
私は、エスコルピオと呼ばれた男の後ろ姿を観察した。
その立ち姿にはどこか見覚えがあった。
ただ、見覚えがあってもそれが誰だったのかは良く思い出せない。
思い出せたのは、その誰かはこんなに殺気だったオーラを纏ってはいなかった、という漠然としたものだった。
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